サブカル出身から見たジャニーズのファン

 

CDTVから早数週間、着実に以前よりもジャニーズ界隈に触れるようになった。

私は今までいわゆる「ロキノン系バンド」をよく聴いていたので、アイドルとの文化の違いがとても大きい。経験したことはないが、転校したような気持ちだ。何にギャップを感じたか、この2つの違いを考えてみたいと思う。

 ジャニーズに関してははまだまだ初心者マークのつく人間なので推測の部分が大きいがお許しいただきたい。ここでは、ジャニーズの対比としてバンドマンは同じ男性であるとして考えている。

 

・ファンの求めているものが違う

これが私が感じた一番大きい違いだ。自明かもしれないが、バンドとアイドルではセールスポイントが全く違う。バンドというからには、バンドマンである彼らには「音楽性」を求めている。もちろん容姿がいいことに越したことはないが、音楽あっての容姿である。格好いい音楽を生み出せなければ応援できないし、格好いい音楽を演奏していればそれなりの容姿でも格好良く見えてくるものなのだ。なんだったらサンボマスターのように格好良くないことで逆に味が出てくるパターンもある。

それに対して、偶像であるアイドルに対しファンたちが求めているのは「人間性」だと思っている。もちろん容姿も含めて。だから今までの経歴やそのストーリー性が応援する要素の1つになるし、同じ舞台を何度も観に行くし、その人が載っている雑誌を月に何冊も買っていたりするのだ。その人間が関わった情報や表情を網羅することによって応援している人間のことをより深く理解しようとしているのだろう。

女性アイドルとジャニーズのどちらも好きだという人よりも、バンドマンとアイドルのどちらも好きという人の方が少数派なのは、シンプルに1つを求めている人の方が多いからなのだろうか。

しかし、フォロワーさんとやりとりをしていると「実は私もサブカル出身です」と言ってくれる方が数人いた。特にA.B.C-Zには多いらしいので興味深い。かくいう私もそっち側の人間なのでもしかしたらえびには新規顧客を開拓する力が強いのかもしれないよ!(希望) 

 

・「売れてほしい」と思いが強い

これはわたしがえびにハマったからよりそう思うのかもしれない。

アイドルを応援するにおいて、インディーズバンド界隈でよくある、ちょっと有名になったら「テレビに出るようになってしまった」「昔の方が好きだった」と言い出す人間がいない印象を受けた。そもそもジャニーズは元からテレビに出ることが前提のアイドルだからそれは当たり前のことだが。

かなり偏った人間の例でいうと、サブカル側の人間は「自分の好きなバンドはそこまで大衆受けしていない、けれどセンスのいいと評価されるバンドでいてほしい」という思いが強いように思う。それは自分が「センスのいいバンドを知っている人間」として認識されたいという思いがどこかにあるからだ。また、「バンドが売れることによってサブカルチャーではなくポップになってしまい、売れる音楽を作ることで本来の音楽性とは異なってしまった」と感じることから、言葉は悪いがいわゆる「懐古厨」が出てきてしまうのだろう。

ジャニーズのようなアイドルを応援する人間は逆で、どちらかというと「もっともっと大きなステージに立って、スポットライトを浴びて、人気になってくれることが嬉しい」という雰囲気だ。特定の人間を応援することで、その人が喜んだ顔をしているのがファンの喜びでもあるという一心同体のような印象すらある。応援している人たちが成功への階段を一歩ずつ登り、成長する段階を追いかけられるのが、アイドルを追いかける醍醐味なのかもしれない。きっと実際はこのようにうだうだ考えているわけではなく、ただ単に容姿や人間性に惹かれてもっと単純で素直な気持ちで応援していることもあるに違いないのだが。

 

・応援しなくなる瞬間がはっきりしている

色々ジャニオタの方のブログを見ていると、いわゆる「担降り」の記事を見かける。ほとほと不思議に思っているが、ずっと背中を追いかけてきた一人の人間を追いかける足を止めるというのは、私が思っているのよりもずっと真摯に向かい合わなければならない出来事なのかもしれない。

またここで反対に、個人的で偏りのある話にはなるが、私を含めその周囲ではその時その時で関心のあるアーティストの入れ替わりが激しい。毎日毎日いろんなジャンルから新しい音楽が発信されてくる。CDは売れないのに流行の移り変わりが激しい、大量生産大量消費社会のようなもので、「心を揺らす人」ではなく「心を揺らす音楽」を探している私達は関心が薄くなったアーティストのことをすぐに忘れてしまうのだ。

高校生のとき、仲の良い友達の間でBase Ball Bear(以下べぼべ)の音楽がいいよね、という話になった。CDもお金がないながら買って貸し借りをしたし、ライブも観に行った。そのときには既にかなり有名な部類のバンドだったが、 彼らは今でも人気があるしタイアップもあるしで触れる機会が多い。しかし、大学生になってからその友達に会った際に、べぼべの新譜が良かったよ、という話をすると、「べぼべか!懐かしいなあ!」と言われてしまった。懐かしい。今でも第一線で活動している彼らが、今では「懐かしい存在」になってしまうことが悲しいと思ったし、そういう点ではアイドルのファンとして「担降り」発言をするほど一心に同じグループやアイドルを追いかけられることが羨ましいと思った。たぶんきっと、私はアイドルのファンになってみたかったのだ。

実際に、人間を軸として何かを追いかけるのは楽しい。追いかけている人間が新しいことに挑戦するたびに自分も新しい世界に足を踏み入れられる、興味を持つことができるのが楽しい。興味を持って数週間、実際にA.B.C-Zが新しく何かに挑戦したわけではないけれど、既に私は観に行ったこともない、今まで上演していることも知らなかった舞台が気になっている。

 

 

着地点はおかしなところにきてしまったが、わたしはアイドルのファンになるきっかけを与えてくれたA.B.C-Zに心から感謝している。