弱っているときのアイドルは脳内麻薬かもしれない

 

超がつくほど私的な出来事だが、一昨日、就職活動を終えた。

何故か私達の年から「学業に専念すべき」という理由で就職活動解禁日が変更され、元々12月1日からだったのが今年は3月1日からだった。今年の就職活動は二極化していたようで、昨年の8月からスーツを着てインターンに行きまくり意識を高める人間と、3月解禁というスタートの遅さに胡坐をかいている人間に分かれた。もちろん私は後者であり、3回生という危機感のない時期に学業に専念するわけがなく、かといって就職活動の準備をするわけでもなく、夏も秋も冬ものうのうと過ごし3月1日を迎えた。なんなら解禁日に一斉に行われた合同説明会は一応予約はしていたものの、朝起きると窓の外が暴風雨だったために一歩も家から出なかったというクズっぷりである。メンタルはそんなに弱いほうではなく、マイペースな性格であることを自覚していたので焦らずやろうと思っていたが、やはり周囲の進捗状況は気になるし、髪を黒から明るく戻していく人間を見るたびに背骨が湾曲していった。周りの友人が複数の内定をもらう中私は最終面接で落とされたり、そもそも最終まで進めなかったり、いわゆる「無い内定」の状態だった。長々と書いたが要するに「弱っていた」のだ。

自分が弱っていくことに自覚しつつ目を逸らしてはいたが、先日こんなツイートが流れてきたことで気付かざるを得なくなった。

 

 

これ、どう見ても私だーーーーー!!!!

 

就職活動の波にもまれ弱った私の前に現れたのがそう、お気づきであろうジャニーズに所属するアイドルA.B.C-Zである。しかし、上記のツイートのように「弱るとアイドルに走る」というパターンだけで考えると、以前から好きだったPerfumeにのめり込んでいる方が自然だと思い違和感があった。もちろん弱っていたから興味を持ったのではなく、CDTVで見たA.B.C-Zがエンターテイメント性と完成度を持ち合わせていたからで、元から救いを求めて彼らのことを見ていたわけではない。CDTVでの底抜けに明るいパフォーマンスとは相反するようなデビューまでの経歴と現状を知れば知るほど現状の自分を感情移入しやすかったことがハマった一因であつことは否定できないけれど、PerfumeもそれこそA.B.C-Zと同様エンターテイメント性の高さとダンスの完成度を持ち合わせているし、苦労した過去もある。それならなんでPerfumeでなくA.B.C-Zにのめり込んでいったんだろう。

そもそも、弱るとアイドルに走ってしまう要因についてもざっくり考えてみた。私の場合は言うまでもなく就職活動での精神的疲労だ。鬱屈とした自分とは対照的に画面の中で輝きを放っているアイドルの眩しさに惹かれたことは間違いない。また、企業と学生の相互のマッチング、とかいう就職活動での表面的な対人関係に疲れた人間が得る、「応援する」というだけの一方通行な気持ちの楽さに気持ちが傾いた部分もある。厳しくも華やかな世界で戦って輝いている彼らについて考えることで明らかに周囲から後れを取っている自分の現実から逃げられたことも要因だと思う。

そして、私がPerfumeよりもA.B.C-Zに救いを求めた一番の理由はきっと、「今現在の立ち位置」だと思っている。Perfumeは苦労した過去はあれど、今ではワールドツアーを行うほどの売れっ子だ。苦労した過去も現在ではシンデレラストーリーと比喩されるほどに成功を収めている。あえてA.B.C-Zとの対比をするなら、実際に音楽の日でのゴールデン枠とCDTVの深夜枠の両方を彼女らは持っていた。それに対し、A.B.C-Zはまだまだ発展途上のアイドルだ。同番組で貰えるのはゴールデンではなくCDTVの深夜枠のみだし、知名度はお世辞にもまだ高いとは言えない。同じ「苦労した経歴」を持っていても、彼らはまだその「苦労した経歴の中」にいる。これが大きな差だと思った。

また、彼らは彼らで売れるための努力を重ねているし、ちょうど今年は塚ちゃんがバラエティに出たりとっつーがドラマや映画に出たり、ド新規の私であってもわかりやすくメディアへの露出が増えて「売れていっている時期」だったのも大きいと思う。これがもうPerfumeや、ジャニーズでいうと嵐レベルで全国的に大人気のアイドルだったらきっとここまで支えてもらえなかったと思うし、かといって地下アイドルのような露出してこない存在であれば物足りない。就職活動がうまくいかず「内定が欲しい」と思っている私には、「売れたい」と強く思っている発展途上のアイドルであり、かつ実際に「売れてきている」ような、明るい未来を連想させてくれるアイドルが心の支えとなるために必要だったのかもしれない。そう考えると彼らはドンピシャだった。

実際私の就職活動は彼らによって支えられたといっても過言ではない。これはいかがなことかと思ってしまうのだけれど、就職活動中に心の拠り所としていたのは親でもなく友人でもなくアイドルだ。一人暮らしのため親には心配をかけたくなかったので弱音はあまり吐きたくないと思っていたし、周囲の友人は進捗状況が気になり心を開ききれなかった。我ながら不器用な生き方をしている。だからこそ、驚異的なスピードでA.B.C-Zに転がり落ちてしまったのだとも思う。彼らの曲を聴くことでパワーも貰えたけれど、その反面脳内麻薬のようだとも感じていて、だから「動いている彼ら」をもっと見たくなったし、その初期衝動にあっさりと負けてしまったんだと今となって気付いた。また、ブログを書いてみると思っていたより大きな反響があり、彼らについて考えるだけでなく、考えていたことを読んでもらえることも、ファンの方と交流することも楽しくなってきた。「就職活動の片手間にA.B.C.-Zを追いかける」はずが、知らぬ間に逆転し、「A.B.C-Zを追いかける片手間で就職活動をする」と言ってもいいくらいになっていた。本末転倒極まりない。結果論ではあるが、それでもアイドルに走ったおかげで精神的に弱りすぎることなく就職活動を終えられたからいいのだ。 

 

なんだか暗い話になってしまったけどこうなるはずじゃなかった。

弱った人間の心にアイドルが入り込んでくる原理は今振り返るとなんとなく理解できるけれども、恐ろしいことに肩の荷が下りた今でも彼らは心の内を占めてやまない。ただ、明らかに中毒性は減った。それは今就職活動を終えた安心感と解放感で足元がフワフワしているからかもしれないし、彼らの眩しさに縋らなくても生きていける状態に戻ったからかもしれない。それはそれで好きなものが1つ増えただけの話で、人生を豊かにする1つの手段であってほしいことには変わりない。

とりあえず今喜ばしいと思っていることは、明日のファウストを心置きなく観れるということ!

あと、予定を立てられる状態になったからえび座に行きたいと思える心と時間の余裕ができたことだ。卒業旅行と卒業論文に支障をきたさない程度に申し込めたらいいな、と思う。